勉強の仕方、傾向と対策

 国試に本腰を入れて勉強を始めるのは、多くの人は受験の半年前、夏休みあたりではないでしょうか。夏を制するものは受験を制すと言いますが、まとまった時間が受験のためだけに使えるのはこの夏休みがベストです。実習や学期試験で手がつけられなかった厚さ5センチほどもある国試問題集は、最初から最後まで最低3回は解かなければならないでしょう。傾向をつかむために国試の出題もさかのぼって3年分には目を通し、余裕があれば5年分は流しておきたいところです。それまで受けた模試も自分のウィークポイントを知る上で欠かせません。誘惑の多い夏に海にも行けず、花火大会もおあずけ、ただひたすら机に向かって受験勉強というのが、悲しいけれど一般的な学生のスタイルです。

 あらかじめ問われる内容の決まっていそうな検査データ、衛生の動向、時事問題などは暗記も有効です。しかし試験範囲はかなり広範囲で、重箱の隅をつつくような細かい項目まで出題されます。そのため闇雲に勉強していても収拾がつかないので、各種資料をフルに活用して、自分でもある程度出題の予想を立てて対策をとる必要があります。だいたい数年分のデータで流れや傾向が見えてきます。厚生労働省のホームページからも3年分は入手できますので参考にしてください。また必修問題は新しい形式だけに戸惑いやすいものですが、深入りや裏をかくような質問はあまりなさそうです。8割が合格ラインということですので、30問中6問落とすと不合格になってしまうというプレッシャーは大きいでしょう。しかしこのことにとらわれすぎて落とし穴にはまってしまうことの無いように注意せねばなりません。あらゆる教科の基礎的な部分を押さえることが最も有効な手段です。

 とにかくたくさんの問題をしらみつぶしにこなすことが一番です。問題集の間違った箇所には派手に印をつけ、同じ間違いをしないよう、3回目には全問正解するくらいの見通しを立てましょう。苦手教科に関してはさらに多くの問題に当たり自信をつけます。模試の出題も毎年の傾向や対策を反映して作成されていますので、一度解いたからと投げ出さずに過去の問題と並行して利用してください。解説文なども親切でわかりやすいものが多くあるはずです。そうやって勉強に没頭した夏が明ける頃には、必ずや成績も右肩上がりに変化しているはずです。夏休みに頑張りが足りなかった、新学期に思うような結果が出なかったという人も、焦らずとも冬休みが残っています。受験の直前まであきらめることはありません。一日でも、一時間でも、一問でも多く消化して自信をつけ、試験に挑むことも大事です。自分はこれだけ頑張った!ベストを尽くした!と言い切れるように、ラストスパートをかけましょう。決してあきらめないことです。過酷な実習や学生生活を乗り越えられたあなたなら、きっと大丈夫。さあ、自信を持って!

暗記はリズムで

 今の受験生は恵まれていると思います。インターネットの普及で情報が入手しやすい環境や、試験対策のバックアップ書籍なども数多くあります。知りたい事はすぐに調べられ、自分にあった勉強のスタイルが探しやすいともいえます。不況・就職難の時代背景を受け、看護師等の資格取得に向けた注目度が上がってきたことも一因と言えるでしょう。

 中でも受験生にありがたいのは暗記法の参考書です。数多くありますので、覚えやすいものを選んでひとつ手にされることをお薦めします。語呂あわせで楽しく覚えられ、リズムに乗って暗記ができると、その問題が実際に出題されたときうれしくなってしまいますね。リズムはとても大事です。法定伝染病の覚え方を、「猫踏んじゃった」の曲に合わせて作っていたのを思い出します。
 (パラ・腸・発疹)
ねこふんじゃった♪
(コレラはチフス)
ねこふんじゃった♪
(痘瘡はもうなくなった)
ねこふんじゃったらひっかいた♪
(流行性脳脊髄膜炎)
ねこひっかいたねこひっかいた♪
(ジフテリ赤痢猩紅熱)
ねこびっくりしてひっかいた♪
(日本脳炎、ペスト)
 テッテケテーノー♪テッテ♪
頭文字をとって「パチンコとペニシリンはせじ」という覚え方もありました。
 パ=パラチフス
チ=腸チフス
(ン)
コ=コレラ
と=痘瘡
ぺ=ペスト
ニ=日本脳炎
シ=猩紅熱
リ=流行性能脊髄膜炎
(ン)
は=発疹チフス
せ=赤痢
じ=ジフテリア
リズムか語呂か、学生さんによって分かれる部分だった気がします。暗記問題の丸まる出題はほとんどないのですが、覚えていることによって他の項目を消去法で絞ることもでき、正解を知らなくても導き出せる強い味方になってくれるのです。ぜひ自分の覚えやすい方法で暗記を楽しみながらやっていきましょう。

時事問題をクリア!

 毎年、必ず数問は時事問題として、比較的新しい・もしくは最新の医療ニュースやデータを問う問題が出題されます。国民衛生の動向に関してはポイントを抑えて、最新を含めた過去数年分のデータがあれば役に立つでしょう。例えば第96回看護師国家試験の出題では、冒頭から時事問題でした。以下に数問だけ、実際の過去問題を挙げてみます。

【問題1】
わが国の平成16年(2004年)の老年人口(65歳以上)の構成割合に最も近いのはどれか。
 1.15%
 2.20%
 3.25%
 4.30%
数値が微妙で悩む人も多いでしょう。これは平成16年度のデータでは「老年人口」は19.5%とありますので、正解は2です。試験の期日と全国統計の発表などの時期的なずれがあり、当然ですがこのようなデータは最新のものは問われません。あるいは出題者の意図的なもので少し前のデータを問うこともありえます。在学中の動向は流れを追って抑えておいたほうが無難でしょう。特に高齢化社会という現実から、このように動きの大きい数値の注目度が高く、対極にある「年少人口」も注目しておきたい部分です。因みに最新の19年版では老年人口は24.9%で、年少人口は14.2%ですが、傾向からすると最新より1,2年古いデータを問われることが多いようです。

【問題37】
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で平成15年(2003年)に感染症として追加されたのはどれか。
1. インフルエンザ
2. 後天性免疫不全症候群
3. 腸管出血性大腸菌感染症
4. 重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスであるもの)
とあります。4年前の法改正に触れており、最新ではないにしてもこのような出題もあるということがわかります。答えは4ですが、たとえその法律の内容を知らなくても、ニュースを見ていれば「4年前に社会的な問題になったこと」として見当が付くものも多くあります。

【問題102】
平成16年(2004年)の高齢者の世帯数で最も多いのはどれか。
1. 単独世帯
2. 夫婦のみの世帯
3. 夫婦と未婚の子の世帯
4. 三世代世帯
正解は2です。普通に考えるとわかるはずですが、昨今のニュースでお年寄りの孤独死が問題になったことや、身の周りの状況などから、1と迷う人もいるのでは。深読みしすぎてミスをしないように、一般常識問題と受け止めて答えを導きましょう。

このように医療界の抱える問題、新しいニュースが問題に反映されることもしばしばです。出題者は明日の医療を担うあなた方看護師のたまごに、「常に情報を収集しようという意識がありますか?」と問うているわけです。ネットやテレビ、新聞などの媒体を通して常日頃から注目度の高いニュース、社会情勢には敏感にアンテナを張って取り込めるよう努力しましょう。

「朝型」のススメ

 
皆さんはいつ勉強していますか?受験生ともなれば、日中だけ勉強して夜はしっかり眠るとはいかないものです。そこで睡眠時間を削って勉強に充てるのですが、朝か夜のどちらかの選択を迫られるわけです。夜は起きていられないけれど早起きが得意な人、夜遅くまで起きているのが苦にならない人、それぞれだと思います。体内のリズムや持って生まれた体質などもありますので、一概にどちらが良いとか悪いとか言うことはできません。しかし、そもそも人間の身体は朝太陽が昇り光を感じると目覚め、夜暗くなると就寝するというメカニズムになっているそうです。そのため夜遅くまで起きていることは、本来のメカニズムに反してしまうため効率が悪いということはよく耳にします。早起きは三文の得だといいますが、実際に受験生にとってはまさに大きな得となることでしょう。また、個人的な経験からすると、結局「早寝」することが朝の得を生むのだという考えに至りました。
 
 それは、単に早く寝たから早く起きられ、得したなぁというだけの差ではありません。実は夜の12時以前の1時間の睡眠は12時以降の睡眠量の2倍に匹敵するといいます。つまり夜10時に寝て朝の4時に起きれば、正味6時間ですが8時間寝たことに等しいというわけです。このような不思議な人体のバイオリズムに加えて、脳が活性化されるピークは朝の7時と言いますから、また、ある人は朝の2~3時間にこなせる仕事量は、昼間の5時間分の仕事量に相当するといいます。体験的な憶測から生じた疑似科学的な内容にも思えますが、朝の時間が静かで、いろいろな邪魔が少なく集中できるという点においては納得できます。これらが事実なら、少しでも時間を有効に使いたい受験生にとっては目からうろこの情報ではないでしょうか。

 学生寮など複数の受験生がいる環境下では、朝型と夜型の交代制度が自然発生することがありますが、このような具合です。『夜型のAさんが自分の勉強を終えたら、朝型のBさんを起こす→Aさんは就寝、Bさんはそこから勉強を始める→朝になり勉強を終えたBさんがAさんを起こす』まるで看護師の勤務交代のようですが、これは互いの特徴の理解と無駄のない相互作用を実現させた、効率的な方法と言えるでしょう。受験は自分との戦いと言っても、仲間と協力することは大切です。

 朝の時間を有効活用することは、なにも受験に限ったことではありません。社会人でもこの方法を実践している人が多数いるようです。残業するより効率が良いそうですが、冒頭で述べたとおり向き不向きというものがあります。もしくは「慣れ」が肝心ということもあるかもしれませんので、受験直前は避け、余裕のある時期に試してみてはいかがでしょうか。案外だめで元々と思っていたことが、良い結果につながるかもしれません。