ハードな看護業務

 「看護師さんは忙しい」というのは、いまや世の中の定説となってしまっているようです。実際のところこれは事実ですが、そもそも何故そんなに忙しいのでしょう?純粋に人手不足など、病院や社会が抱える問題もその原因のひとつではあります。しかし最も大きな原因は、看護業務の対象や性質そのものにあります。看護は患者さん個人の「疾病の管理」「生活の援助」が基本であり、それは「継続」するもので終わることがないのです。そのため看護という仕事は、対象となる患者さんの入院から退院まで、時には退院後の健康状態のチェックまでも必要な業務の範疇となります。それに対象となる患者さんは、たとえ同じ疾患であっても、人により必要とされるケアや治療・看護方針は異なります。病院においては、限られた人数でチームとして動き、限られた時間の中でたくさんの業務をこなす、だから看護師さんはいつも小走りしているイメージなのでしょう。

 勤務体制もまた、定時に帰れる会社勤めの人とは異なるのが特徴的です。多くは交代制と呼ばれる勤務体制で、日勤や夜勤など時間帯もばらばらです。日勤帯では検温や検査、日常生活援助、投薬やリハビリ、看護指導などを決まった枠組みの中でこなさなければなりません。そこに例えば重症の患者さんがいたり、急変が起こったりすると業務の流れは思い通りにはいきません。患者さんの状態の変化を見逃すことなくいつでもチェックしておかなければならないし、投薬などは正確に・慎重に・ミスは決して起こさぬよう、看護師さんは常に緊張して働いています。夜勤では主に翌日の準備を行いつつ、患者さんの状態のチェックや睡眠状態などの観察を行います。昼間よりもさらに少人数での看護体制が余儀なくされ、朝までの勤務は長く感じられるものです。やはり、いつ見ても、どこをとってもードな看護業務だということがいえると思います。

しかし、慣れは上達の薬といわれるように、経験を積んでいくとどんなにハードな業務だろうと、自分のペースでこなせるようになり、逆に何もない落ち着いた日は物足りなくなってしまうこともあります。援助一つにかかる時間も短縮され、空いた時間を患者さんのために使えたり、他のスタッフの手伝いができたりするので、周囲を見渡す余力ができます。スピーディに正確に、という立ち回りが出来れば看護師も一人前です。患者さんはそんな看護師さんたちの動きをよく見ていて、「忙しそうだから・・・」と、ときには気を使ったりするものです。患者さんのためを思うと最も大切なことは、忙しく大変なことを顔に出さず、明るく笑顔で接することができるかどうかということです。看護は行う側の一方通行では成り立ちません。双方の理解のうえで成り立つものですから、どんなに忙しくても患者さんとの信頼関係を保つためのコミュニケーションは忘れないでくださいね。

失敗は許されない

 近年、重大な医療事故の報道が取り沙汰され、世間の医療に対する関心は高まっています。「医療事故」とは全ての医療過程において起こる人身事故のことであり、事故の当事者はもちろん、直接関係はなくても見聞きすることによって医療不信に陥ってしまう人も多いようです。こうした医療事故に関する問題は様々なケースが存在しますが、患者と医療者の間の信頼関係の揺らぎが水面下には必ず存在しているといえます。看護師はこうした諸問題が起こることを予防するため、患者の理解を促し、医者と患者の間にうまく介入する潤滑剤的な役割が期待されます。また、「医療過誤」という医療者の過失を問われる問題も中には多く存在し、仕事の際には常に自身の医療行為についても責任を持ってミスのない様に努めなければなりません。

「機械ではなく人間だから、失敗することもある。」というのは、こと医療に関しては例外で、ある意味機械よりも正確でなければいけません。あらゆる医療機器でさえ、誤作動がないかをチェックするために、最終的には看護師の目で何重にもチェックすることが必要なほどです。よく「インシデントレポート」や「ヒヤリハットノート」という言葉を聞かれると思いますが、これらはミスを防ぐための手立てとして、過失及び過失に繋がりそうな出来事を報告させる形式です。ミスを起こさないためには、ミスに繋がるあらゆる情報をスタッフで共有し、ケースを分析して対策を立てることが最も重要であるといえます。こうした取り組みは病院全体で行うべきであり、もちろん、医療者一人ひとりの日ごろからの心がけが大切です。

ミスをしまいとして緊張するあまり、業務が滞ったりかえって危険な状況に陥ったりすることもありえます。また、やはり新人の時期が一番ミスを起こす可能性が高いという報告があります。その予防としては先に述べた個々の病院での取り決めや、自分自身の知識・技術を高める努力をして自信をつけることです。何かあった場合にも、溜め込まずにオープンに打ち明けたほうが「二度とミスをしない」という意識に切り替えることができ、周囲のスタッフにも良い教訓となります。患者さんの命と同じくらい大切な信頼を損なわないためにも、看護師の仕事に対する姿勢と役割は、とても高いものが求められていることを忘れないでください。